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不妊症治療・妊婦健診

当院では、不妊症の治療と妊婦健診を行っています。
不妊症の原因は様々な要因が絡み合っていることが多いです。患者様の年齢、検査結果などを総合的に判断して、「卵巣刺激法」「タイミング療法」「人工授精療法」「体外受精」などの治療法をご提案させていただきます。当院では人工授精まで対応可能です。
妊娠健診の目的は、母児ともに健全な状態で妊娠・分娩を終了させることです。当院は4Dエコーを導入しており、より鮮明な画像をご覧いただけます。妊婦健診の画像は保存、転送させていただき、最終日に希望者に対してUSBをお渡しします。健診には川崎市の公的補助が適用されます。

不妊症治療

不妊症とは

一般的な生殖年齢カップルの妊娠率は、避妊せずに通常の夫婦生活を行った場合、半年間で約65%、1年間で約80%、2年間で約90%とされています。
不妊症は、1年以上たっても妊娠に至らない場合と定義されており、5組のうち1組、つまり約20%のカップルが不妊症だといわれています。

治療開始時期

妊娠率は年齢が上がるにつれて低下します。35歳以上の女性は妊娠しづらくなるため、不妊症の治療開始時期は以下が望ましいです。

妻が35歳未満

1年経過しても妊娠に至らない場合

妻が35歳以上

半年経過しても妊娠に至らない場合

(ここに年齢と妊娠率の表を入れる)

不妊症の原因

男性側に原因がある場合は約45%、女性側に原因がある場合は約55%です。
男女ともに原因がある場合は約25%で、そのうち原因不明と診断される割合は10~15%に及びます。
妊娠成立の一連の過程のどこかに障害があれば、不妊症ということになります。

妊娠成立の過程

  1. 精子が膣内に射精される
  2. 精子が子宮内に移動
  3. 精子が卵管に移動
  4. 排卵した卵子と精子が卵管で受精
  5. 受精卵が子宮内膜に着床して妊娠成立

女性不妊の原因

女性の不妊症の原因は主に「内分泌因子」「卵管因子」「子宮因子」「頸管因子・免疫因子」があげられます。

内分泌因子

ホルモンバランスの異常です。
基礎体温を毎日測定することにより、月経周期と排卵の有無、排卵日の予想、高温相の体温型による黄体機能の評価、妊娠の診断などの情報を得ることができます。
また、卵成熟や黄体機能を推定するために、排卵前のエストラジオール(E2)値・黄体中期のプロゲステロン(P4)値・下垂体ホルモンの基礎値(LH、FSH、プロラクチン)・甲状腺ホルモン値を測定します。また、保険外診療にはなりますが、AMH検査(血中抗ミュラー管ホルモン)により卵巣予備能を測定することがあります。

卵管因子

女性の不妊症で最も多い原因で、卵管の通過障害が考えられます。
性感染症のクラミジア感染症が原因となっていることが多いですが、クラミジア感染症になってもほとんどの女性は無症状です。そのため、感染したまま治療せずに放置していると、卵管が狭くなり、運動性低下につながります。

子宮因子

子宮内の環境が悪いと受精卵がうまく着床できません。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮形異常などがあげられます。正確に診断するためは、超音波検査だけでなく、子宮鏡により評価します。
近年は慢性子宮内膜炎と不妊症の関連が注目されていて、慢性子宮内膜炎と診断された場合には、適切な抗生剤を投与します。
また、鉄不足、銅過剰、亜鉛不足、ビタミンD不足は不妊症との関連が指摘されています。食事で接種した銅が体外に排出されず、体内に蓄積されるwilson病の方は、妊娠しにくいといわれています。銅と亜鉛は小腸、十二指腸で吸収され、亜鉛を接種することにより血中銅濃度が低下し、着床しやすくなります。
それから、ビタミンDが低下していると、着床率の低下、不育症、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病につながりやすいとされるため、血液検査で25OHビタミンDを測定します。

頸管因子・免疫因子

子宮頸管中に分泌される抗精子抗体により、精子が子宮頸管を通過することが困難になっている状態です。

男性不妊の原因

主な原因は造精機能障害とされています。
男性側の検査では、精液検査で精子の有無や濃度、運動率、白血球数、精子の形体などを観察します。ただし、同一患者様から反復して精液を採取した場合にも変動があるため、一度の検査だけでは正確に診断できないこともあります。
ストレス、疲労、喫煙、過度の飲酒、肥満などは精子の形成に影響を及ぼします。

不妊症の検査

妊娠成立の過程に障害がないかどうかを診断するため、まずはスクリーニング検査を行います。

スクリーニング検査

  • 基礎体温
    月経周期、排卵の有無、黄体機能を評価します。
  • 超音波検査
    子宮内や卵巣に問題がないかどうかを調べます。
  • 子宮頸がん検査
  • クラミジア抗原検査
  • ホルモン検査(FSH、LH、E2、甲状腺ホルモン、プロラクチン、男性ホルモン)
  • ミネラル検査(銅亜鉛、ビタミンD)
  • AMH検査(抗ミュラー管ホルモン)
  • 子宮鏡検査
    子宮内膜の状態を評価します。
  • 卵管通水試験
    超音波検査下で卵管に生理食塩水を注入し、卵管閉塞がないかどうかを確認します。
  • 精液検査
    パートナー男性の精子の動きを調べます。

不妊症の治療

不妊症の原因は様々な要因が絡み合っていることが多いです。
患者様の年齢、検査結果などを総合的に判断して、「卵巣刺激法」「タイミング療法」「人工授精療法」「体外受精」などの治療法をご提案させていただきます。

卵巣刺激法

内服薬による刺激
①シクロフェニル療法

下垂体に作用し、ゴナドトロピン(FSH、LH)分泌を高めることで、弱い排卵誘発効果があります。
抗エストロゲン作用を持たないため、頸管粘液減少、子宮内膜菲薄化などの副作用はありません。
生理3日目から7日間服用いただきます。

②クロミフェン療法

抗エストロゲン作用のある薬です。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であり、エストロゲン受容体に結合しますが、エストロゲンのような生理活性を持たないため、エストロゲンの拮抗薬として働きます。
脳の視床下部のエストロゲン受容体に対して内因性エストロゲンと競合的に結合し、エストロゲンによるネガティブフィードバックを阻害。視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌と下垂体からのゴナドトロピン(LH、FSH)の分泌を増加させ、卵巣を刺激して卵胞の発育を促進します。

③レトロゾール療法

アロマターゼはアンドロゲン(男性ホルモン)をエストロゲンへ転換する生合成酵素です。アロマターゼ阻害剤であるレトロゾールを生理5日目から5日間服用することで、視床下部の対するエストロゲンのネガティブフィードバックを阻害し、GnRHとFSHの産生が増加します。
閉経後の乳がん治療薬のため、排卵誘発の目的は保険適用外となり、自費診療です。近年、多のう胞性卵巣症候群(PCOS)に対して、クロミフェンとレトロゾールにより妊娠率を比較したランダム化比較試験で、レトロゾールの有効性が報告されています。

注射による刺激
④ゴナドトロピン療法

クロミフェンがSERMとして抗エストロゲン作用を示して間接的に排卵を誘発するのに対して、直接的にFSH、LHなどのゴナドトロピンを投与する方法です。
卵巣へ直接作用するため、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用があります。
一般的に卵胞が16~18mm以上に発育するまでhMG製剤(150単位)を隔日投与し、その後にLH作用を有するhCG製剤(5000単位)を投与して排卵を誘発します。hCG投与後の排卵は通常36~48時間の間に起こることが多いとされています。

タイミング療法

最も妊娠しやすい時期に性交を行っていただきます。自然妊娠に近く、ご夫婦にとって最も負担の少ない治療法です。
まずは、超音波検査で卵胞の大きさを確認し、基礎体温やホルモン検査の数値などを参考にして、効果的なタイミングを指導させていただきます。
健康な男女が性交を行ったときの妊娠率は、排卵日、排卵前日、前々日はほとんど妊娠率に差がなく、排卵日の5日前まで妊娠の可能性があります。

人工授精療法

精液中には、精子以外にも白血球や微生物などの異物が混じっています。そのため、当院ではメニコン社の「ミグリス」という精子選別デバイスを用いて人工授精を行います。
人工授精当日、射精後2時間以内に精液を持参していただき、精子調整に約1時間を要します。

対象者
  • タイミング療法を3~6カ月以上行っても妊娠に至らない方
  • 精液の所見不良(乏精子症など)
  • 性交障害
  • フーナーテスト(性交後試験)不良
  • 原因不明の方
ミグリス

一般的な人工授精で用いるバーコール法による遠心沈降法に伴う精子のストレスを避け、良好な精子を採取することが可能です。
容器の外側に精液を注入後、培養液を溢れさせ精子を覆う程度まで注入すると、運動精子のみが内側の壁を越えます。中央の底部に集まった運動精子を採取する仕組みです。
(ミグリスの図)

(ここに治療法と妊娠率の表を入れる)
ただし、上記図のように、原因不明の不妊に対して自然周期の人工授精の妊娠率は低く、卵巣刺激法を行った方が妊娠率は上がります。
ゴナドトロピンを使用して卵巣刺激を行うと、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群のリスクが上がるため、超音波検査で大きな卵胞が成長していないかどうかを確認しています。

体外受精

人工授精療法を3~6カ月行っても妊娠に至らない場合は体外受精にステップアップしていただきます。
当院では対応していませんので、適切な医療機関をご紹介させていただきます。

妊婦健診

妊婦健診とは

妊娠健診の目的は、母児ともに健全な状態で妊娠・分娩を終了させることです。妊婦健診は母子保護法に基づいて実施され、すべての妊婦がこれを受けることが推奨されています。
初診の時点でのハイリスク妊娠の抽出が重要で、的確な情報を得るために入念な問診を行います。
妊婦健診は川崎市の公的補助が適用されます。

当院の妊婦健診の特徴

当院の院長は、産科歴が15年以上に渡り、分娩立会い約4,000件以上、無痛分娩2,000件以上、周産期センターでNICU(新生児集中治療室)、ハイリスク妊娠管理を経験し、現在も他施設で無痛分娩を含む分娩に立会い、産科領域の技術維持、勉学に努めています。

  • 妊娠管理は産科診療ガイドライン、エビデンスに準じて行います。
  • 希望者に対しては、産婦人科遺伝診療学会周産期認定医による出生前診断について説明します。
  • 妊娠初期、妊娠20週、妊娠30週頃に、胎児スクリーニング検査を行います。
  • 妊婦健診の画像保存(転送)、適宜4Dエコー(無料)を行い、最終日に希望者に対してUSBをお渡しします。
     ※コロナ対策のため。
  • 妊婦健診は予約制であり、できるだけ待ち時間がないよう努めています。
  • 妊婦健診時、ご家族と一緒に超音波画像が見られます。詳細は外来で説明させていただきます。
  • 当院通院中の妊婦様に院長の連絡先をお伝えします。いつでもお気軽にご相談ください。
  • 分娩施設の紹介をご希望の方には、適切な医療機関を紹介させていただきます。

(4Dエコー写真掲示)

妊婦健診の項目

1.妊娠初期検査(8~10週頃)
経腟超音波検査による胎児スクリーニング検査

後頸部肥厚(NT)、無脳症、心奇形、髄膜瘤などの診断をします。
また、2020年産婦人科診療ガイドラインに準じて、この時期に赤ちゃんの大きさより分娩予定日を決定します。

初期血液検査

血液型(ABO式・Rh式)、不規則抗体、血算、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗体、HIV抗体、梅毒血性反応、風疹抗体、HTLV-1抗体、血糖値、トキソプラズマ抗体を調べます。

子宮頸がん検査
性器クラミジア検査

早産、前期破水、分娩後の新生児感染症への影響を確認します。

膣分泌物細菌学的検査

早産への影響を確認します。

クアトロ検査(母体血清マーカー)、羊水検査

NIPT検査をご希望の方は日本産科婦人科学会の認定施設へ紹介させていただきます。

2.妊娠中期検査
経腟超音波検査(20~24週)

子宮頸管の長さを計測し、早産のリスクを評価します。

経腹超音波検査(20週)

胎児スクリーニング検査(頭部、心臓などの臓器、羊水量などの確認)です。

中期血液検査(24~26週)

血算、血糖を調べます。

3.妊娠後期検査
経腹超音波検査(30週)

胎児スクリーニング検査(頭部、心臓などの臓器、羊水量などの確認)です。

妊婦健診で定期的に行う検査

経腹超音波検査

赤ちゃんが順調に成長しているかどうかを、赤ちゃんの位置や羊水の量で判断します。

血圧・体重の測定

高血圧や急激な体重増加がないかを確認します。

尿検査

尿糖、尿蛋白などを確認します。

妊婦健診のスケジュール

妊娠10~24週

4週間に1回

妊娠24~32週

2週間に1回
※出血や腹痛がある場合はご連絡のうえ、上記期間に限らず受診してください。

妊娠中によくみられる疾患について

切迫流産

切迫流産は妊娠22週未満に赤ちゃんが排出されていない状態で、流産に進行する可能性がある臨床症状(性器出血、腹痛、子宮頸管長短縮など)を呈する場合とされています。
流産予防に効果的な薬物療法は存在せず、上記症状がみられる場合は安静療法となります。

切迫早産

妊娠22週37週未満に下腹部痛(10分に1回以上)、性器出血、破水などの症状があり、規則的な子宮収縮、子宮口の開大、子宮頸管長短縮などがあると、早産のリスクが高いとされています。
早産の原因は、絨毛膜羊膜炎、前期破水、頸管無力症がほとんどで、特に早産の既往歴、円錐切除術歴のある方はハイリスクです。スクリーニング検査としては、妊娠20~24週頃の経腟超音波検査で、子宮頸管長≦25mmの方は早産ハイリスクとなります。
治療法には、安静療法、薬物療法がありますが、子宮収縮抑制作用のある内服薬は早産率やNICU入院率を減らすというエビデンスはなく、動悸などの副作用があることから、当院では安易な処方をしていません。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降、分娩12週までに高血圧がみられた場合、または高血圧に蛋白尿が伴う場合とされています。頻度は全妊婦の4~8%で、肥満、高齢妊娠、家族歴、初産婦に多くみられます。
母体合併症として、全身的な血管病変が起こり、蛋白尿、肝酵素の上昇(HELLP症候群)、子癇発作(痙攣発作)、常位胎盤早期剥離などがあります。
児の合併症としては、胎盤機能不全に伴う胎児発育不全、胎児機能不全症などがあり、そのため、早産や帝王切開が増加します。
根本的な治療は妊娠の終了であり、妊娠週数などを考慮して妊娠継続する場合には原則入院管理になります。早期発見には、栄養指導、体重管理、血圧管理が重要で、妊婦健診で定期的に確認させていただきます。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病のスクリーニング検査は、妊娠12週と24週頃の血糖測定で行います。
随時血糖値≧100mg/dLの方に対して75gOGTT検査を施行しています。これは、75g糖水の摂取前、1時間後、2時間後に血糖値を測定し、それぞれ92mg/dL、180mg/dL、153mg/dL以上を陽性として、1つでも満たせば妊娠糖尿病と診断されます。その頻度は12%とされています。
血糖コントロールが悪いと、児の奇形、腎症や網膜症が増加するため、妊娠中の血糖管理は非常に重要です。
治療法は食事療法、運動療法、薬物療法があり、ほとんどが食事療法で対応できますが、コントロール不良の方はインスリン注射が必要です。
当院では妊婦健診時に定期的に尿糖検査を行い、スクリーニング検査が問題ない方でも、必要な場合には75gOGTT検査を行います。

妊婦健診の費用

(妊婦健診料金表)

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